2013年05月12日

航空学生の話 5 〜果てなく続くストレート編〜

 8時40分くらいから授業が始まります。座学の教官方は比較的優しいので午前中のこの時間が世の中で一番安らぐ時となります。ちゃんと勉強しないといけないのはわかってますが、どうしても気が抜けてしまいます。そんな気が抜けてる瞬間を先輩方は見逃すはずがありません。どこからともかく監視しているのです。ちゃ〜んと寝ている時のことを指導の時に指摘して必殺の言葉

『口で言ってもわからないんなら体でわかってもらうよ!』

がでます。


 11:45、授業が終わり昼御飯を食べに行きます。その時は時間があるので、5分ほどの食事時間を確保できます。食べ終わるとすぐに自分の部屋に帰り、朝着ていた作業着にアイロンをかけ、軍靴を顔が写るくらいに磨き次の準備をします。制服から作業着に着替え、外に集合します。

 13:00、集合完了の命令が出されます。その場合は5分前の12:55に集合完了の報告を完了しなければならないため、12:50にはその場にいなければなりません。その時間は先輩ではなく教官方からの指導が始まります。初めは主に教練(回れ右、敬礼、前進め等の基本動作)をします。大体15:00までやる。途中に少しの休憩はありますが、ほぼぶっ通しで行われます。その時にあらためて自衛隊に入ったんだな、軍隊なんだなと思ってしまう出来事がありました。教練の時に教官から指導を受けているときのことです。行進をやっているときに、

「もし、目の前に崖があっても俺がそのまま前進と言ったらそのまま崖に前進していけ!」

と言われたことでした。

立ちっぱなしで足腰がくったくたになっている状態で、次の指令が下されます。

「10分後に体操着に着替えて集合完了!解散!」

解散を言われた後に本気で走って部屋に帰り、着替えてまた走ってもとの場に戻り集合完了の報告をして、何をするのかと思ったら「走る」でした。
 アップで大体3キロ程走り、基地の外周(7,5キロ程度)を走ります。さすがに最初の頃は皆でゆっくり走るのですが、3、4回したらスタートだけ一緒であとはばらばらに走りました。一番遅い人で30分ほどで帰ってきます。一番後ろの人たちは教官から叱咤激励されながら走ります。かなりの限界で走っているのですが、後ろから教官に押され無理矢理走らされます。中には吐きながら走る人もいます。基地の外周には果てしなく続く直線があります。いくら走っても先が見えず走る気力を失いそうになります。

 入隊から一ヶ月ほどすると教練がなくなり、13:00から走り、それが終わると水泳の訓練に入ります。大体16:30くらいまで続きます。どれだけ体を動かすのかわからない程動かします。全く泳げない人でも3ヶ月で完全に泳げるようになります。それほど泳がせるのです。8月に海で実際何キロか泳がないといけないからです。

 最初の一ヶ月は先輩たちが厳しいのですが、それを過ぎると教官たちが鬼のようになっていくシステムとなっているのです。理不尽は当たり前であり、目上の人には絶対に反抗できないように教育するためです。僕が体験した理不尽な話を紹介します。担当の教官が最初に言われた言葉が

「俺は人を殴るときは絶対に自分の拳を使って殴る。なぜなら殴ったら自分の拳も痛むだろう!」

と断言していました。もうオチはわかると思います。もちろん、自分の拳でなく物で殴られるのです。ですが、何の反抗もできないし謝ることしかできないのが現状なのです。


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Posted by ぼくの手 at 21:59 │自衛隊系
この記事へのコメント
読んでいるだけで、逃げ出したくなりました。
もう嫌だ、走りたくない。。
Posted by ひだかっち at 2013年05月13日 15:52
やっとで話も終盤になりそうです。これからドンドン追い込みが激しくなっていきますよ!まーだまだです!
Posted by ぼくの手 at 2013年05月13日 20:01