2013年04月08日

航空学生の話 1 〜受験編〜

 小学生の頃の夢として多くの人が持つであろう、「パイロット」の話をしていこうと思います。先に書いときますが、かなりの長文になりますし、何回にも分けて書きますので長文が嫌な方は読まない方がいいですのでご了承ください。なぜパイロットの事を書くかと申しますと、僕の夢だったからです。夢半ばで砕け散った話になりますが、こんな社会もあるんだなと思っていただけたらと思います。では、長文御覚悟ください。



 まず、パイロットになるには3つ程の選択肢があります。1つ目は高校を卒業してアメリカに行き、セスナの免許を取る事です。これなら意外と簡単に取れますが、結構お金がかかってしまいます。2つ目は高校を卒業して大学か短大に行き2年後航空大学校に行く事です。かなりの難関だと聞いてます。どれくらい難しいかは知りませんが、とにかく頭が良くないと入れないらしいです。3つ目は自衛隊の部隊である航空学生に入る事です。海上自衛隊と、航空自衛隊両方に航空学生はあります。僕はどうせなら戦闘機のパイロットになりたかったのでこの3つの選択肢の中から航空自衛隊の航空学生を選ぶ事にしました。そして運良く航空学生に入隊する事が出来ました。けど、根性無しですぐ辞めましたけどね!まー、色々その辺のことも書いていきますので興味のある方は読んでください。



まずは航空学生にどうしたら入れるかを書きます。



 そこは普通の部隊とは違いパイロット養成部隊ということもあって大変厳しいものです。全ての自衛隊員がこれから書くことをやっているかというとそうではありません。あくまで特殊部隊ということで読んでください。



 試験は全部で3次試験まであります。1次試験は簡単な高校レベルの問題がでます。場所はそれぞれの都道府県で実施されます。普通に勉強していれば落ちることはまずありません。その当時偏差値が40前後であった僕が受かったくらいですからそれなりに簡単だと思います。もしかしたら僕の運が良すぎて受かったのかもしれませんので、勉強は出来るにこしたことはありません。試験の時期は9月で、結果発表が10月だったと思います。



 2次試験は多少大きい基地に一泊二日で行われます。内容は身体検査と面接です。
 
 この身体検査というのが普通のものとは違い、かなり細部までやります。特に目を重点的に検査します。目の検査だけでだけで7つ前後やったと思います。他は肺活量、バランス感覚(三半規管の問題をみるためかも)等あまり細部を覚えていませんが、とにかく一日中検査をしました。身体検査は目が悪い人が多いため落ちる確率があがります。中には乱視ということを初めて知った受験生もいました。もちろん、その人は落ちてました。

 面接は普通だったと記憶してます。とにかく、やる気を全面に出して自分は絶対受かりたいんだ!という事を訴えれば大丈夫だと思います。あまりにも暑苦しいと駄目かもしれませんが、ある程度体育会系のノリでいけばいいのではないでしょうか。あまり裏表がありそうな感じだと受からないかもしれません。素のままをさらけ出した方が良いと思います。合格基準はわかりませんが、面接の基本は相手の立場になることです。相手は特別国家公務員の自衛隊ということを考えて、どんな人間が欲しいか考えますと、まずは単純かどうかということだと思います。敵地に赴き、上官の命令に従えないような人間は採りません。何も考えずに命令に従うような人間を採りたいと思います。しかし、航空学生という部隊は特殊ですのでこれにあと1つ条件が加わります。それは、『負けず嫌い』ということです。この意志がない人間にパイロットは勤まりません。



 問題は3次試験です。4泊5日にもわたって全国で2カ所の基地で適性検査が行われます。実際、飛行機に乗り操縦をします。1日に1回、計4回乗ります。車も運転したことない高校生がいきなり飛行機を操縦することになります。もちろん、二人乗りで教官がほとんど操縦してくれます。地上である程度の講習をするのですが、そんなもの素人に淡々と説明されても何を言っているかさっぱりわかりません。講習が終わりみんなで情報を交換するしかありません。今思うとそれが目的の講習なのかもしれません。コミュニケーション能力も問われているのかもしれませんね。

 4回フライトしますが、毎回教官は変わります。そして、いざ1回目空に飛び立って空での試験をしろと言われますが、全く何もできないと思います。その時の教官にもっと勉強をしろ、と言われますがそこで凹む必要はありません。2回、3回、4回と段々上達していけばいいのです。詳しい採点方式はわかりませんが、ある自衛隊員からそのように聞きました。4回目のフライト試験が終わった後、アクロバットを要求するとやってくれます。普通は1つか2つしかやらないのだが、中には5~6やってくれたりします。それだけやられたら乗り物に強い人でも酔うと考えたほうがいいです。僕は乗り物で酔った事なんて一度もありませんでしたが、アクロバットを5〜6やってもらったら酔いました。キリモミや宙返り、ストップアンドゴー(上空でエンジンを切り機体を突然失速させてからのエンジン始動)等など色々やっていただきましたが、見事に吐き気をもよおしました。
 ここで受かるのに重要なことだと僕は勝手に思っていることがあるのですが、酔ったなんて言ったら駄目だと思います。地上にいる人たちから体に異常がなかったかとかなりしつこく聞かれますが、言わない方が僕はいいと思います。僕の場合、『耳鳴りはしなかったか?』と言われましたが、『ありません!』と答えました。後々やっぱりちょっと痛いです、って言ったら物凄く怒られましたけど・・・
 その練習機はセスナ機みたいなものですが、一番G(重力)がかかるときには6G程かかってました。







こんな飛行機です。
航空学生の話 1 〜受験編〜






後部の操縦席に乗ったときに撮ってもらいました。
航空学生の話 1 〜受験編〜







柔道で体を鍛えたつもりでいた僕でも、自分の首を動かすことが難しかったです。操縦試験以外にもまた身体検査と面接があり、2次試験と同じくらい詳しく調べられます。
 その時の面接では、アンケートに答えて、そのアンケートを元に面接を行います。アンケートにビッシリ書く人もいれば、一言二言しか書かない人もいます。僕は後者でした。確かこんな質問があったように記憶します。

『パイロットに求められるものは何か?』

僕の答えは

『心・技・体』

とだけ書きました。柔道で習ったことでしたが、何にでも通じることだと思い書きました。その事を面接で話したように記憶しています。それでも受かりましたので、内容がちゃんとしてればそれで良いのだと思います。





空の上でのショット。
航空学生の話 1 〜受験編〜






 この3次にわたる試験に合格するとやっとで入隊が認められます。試験人数が約2500人程度ですが、合格する人間は約70人しかいません。その倍率は、約36倍あります。県で2人受かるか受からないかの高倍率です。宝塚ジェンヌ達の倍率が20倍ですから、相当な倍率だと思います。

 3次試験の合格発表が1月の後半だったと思います。なんでこんなに遅くまで待たせるんだろうかと思いましたが、どうやら、最後まで航空学生を志望しているかどうかを見極める為にわざと遅くしているそうです。
 高校の担任の先生も僕が合格した事にビックリしていて、相当興奮していました。職員室に行くと、僕を知ってる先生みんなが驚いていました。そりゃそうですよね。ろくでもない生徒の僕が倍率36倍の難関をクリアしたわけですから、先生方は驚きと同時に不思議だったと思います。


 今回はこのくらいで終わります。次は実際航空学生の生活を書いていきます。一日を説明するのに、口頭でも2時間はかかってしまうような内容ですので、また長文になりますけどよろしくお願いします。




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Posted by ぼくの手 at 18:07 │自衛隊系
この記事へのコメント
毎日毎日海上自衛隊の飛行機やヘリコプターがうるさい( ̄^ ̄)
Posted by ひだかっち at 2013年04月08日 22:24
基地に直接出向いて、『パイロットを出すんだ!』といえば一石二鳥ですよ!!

これはチャンスとみるべきです!
Posted by ぼくの手ぼくの手 at 2013年04月09日 15:29