2013年05月20日

航空学生の話 7 〜アゲアゲEVERY騎士編〜

 時間帯も遅く空は完全に夕闇に包まれています。

それでも人の気配を察知するために少ない灯りの中、目を凝らして周りを見なければなりません。



 19:25、風呂から帰ってくると、当然の如く布団はばらばらになっております。

いい加減にしろ!と言いたいところですがそんなことは絶対に無理なんです。

作業着を脱ぎ布団を綺麗にして、また作業着にアイロンをかけて19:30に集合完了の命令がでておりますので集合場所に急ぎます。

しかし例のごとく様々な妨害により間に合わないんです。


 19:45、集合完了報告をするとそこからは20:30まで、口で言われてもわからないので体で理解することをします。

ここが一日のクライマックスと言っても過言ではありません。

みんな限界などとっくに超えた状態で動き回り、この時間までテンションをアゲアゲに保ち自分や同期を鼓舞し続け、なりふり構わず一日を生きてきたのです。

中には先輩に気に入られない人間がいて、個別に指導を受けたりします。

僕の場合、すぐに返事をしないことを指導されました。

また先輩との会話を書いていきます。


先輩『おい!坂上!!』

僕『はい!坂上学生!!!』

先輩『お前腕立て伏せの時に足広げてやってんだって〜?!?!』

僕『(え?駄目なの?!?!)はい!やっているであります!』

先輩『何楽してんだよ!?!?』

僕『(高校の時ずっとこのスタイルだったんだけど!)いえ!そんなつもりはありません!!!』

先輩『お前はなんですぐに返事ができねーんだよ!?』

僕『(すぐに返事して余計なこと増やしたくねーんだよ!)すみません!』

先輩『すみませんじゃねーんだよ!すぐに返事できねーのか?!お前と俺は宇宙と地球で会話してんのか!?!?』

僕『(俺はいっこく堂か!!)いえ!すみません!』

先輩『謝って済めば戦争は起こらねーんだよ!』

僕『(間違いない!)すみません!!!』
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ま、こんな感じでした。


 20:30、自習時間が一時間与えられます。

その時間でどうしたら色んな時間の短縮ができるかを話し合い、たまには意見を言い合って熱くなり殴り合いの喧嘩になりそうになったりします。

ぶつかり合って成長するとはこのことだと思いました。

自習時間の時にはもう精根尽き果て、何も考えたくなくなります。

ですが、どうしたら良くなるかをひたすら話し合うしかないんです。


 21:30、自習が終わると同時に自分の部屋にダッシュで帰り、作業着にアイロンをかけていると放送で集合の命令が下されます。

その時は一日の訓示のようなことをします。

その時にも個人的に呼ばれて先輩たちに説教されます。

ちゃんと理由があって説教されることもありますが、中にはただ気にくわないというだけで説教されることもあります。

本当に殴り掛かろうかと思う程の憎しみを覚えるのですが、ほとんどの先輩たちはさすが一年やってきただけあって身体が見事に洗練されていて勝てるわけがありませんでした。


 21:55、点呼をとり解散する。


 22:10、消灯のラッパが鳴り響き一日が終わる。


その15分の間に歯磨きやら作業着にアイロンやら靴磨きやら色々やります。

ラッパが鳴ると電気を消さなければならないため、暗闇に包まれます。

やっとで一日が終わりました。

と思いきや、先輩と同室の為色々注意されます。

とは言え、そこまでメチャメチャに言われたりはしません。

その部屋の先輩は自分の担当の先輩後輩なのである程度優しいのですが、運悪く僕の同室の先輩は2年生の指導隊の隊長でしたので、鬼が棲んでました。

1時間くらい話をしたらさすがに寝に入ります。

これで一日が終わった・・・

と思いきや、夜中に突然集合がかかります。

寝ぼけている暇もなくすぐに作業着とヘルメットを装着して外に集まると

 『遅い!もし敵が攻めてきたら今頃お前らは死んでいるぞ!』

 というようなことをその時の宿舎の教官から言われ解散します。

ここまできたら嫌がらせのようなものですよ。

 5:00、目覚ましがなるわけでもなく、誰かに起こされるわけでもなく、頭の中で起床のラッパが鳴ったかの如く「バチ」っと目が覚めます。

6時から始まる地獄の1日を想像しただけでその場を逃げ出したくなります。

ですがそんな願いが叶うわけもなく寝なければなりません。

そこから10分毎に目が覚めます。

5:50には目が完全に覚めるのですが、布団の中から出てはならないため布団の中でゴソゴソと靴下を吐き出します。


 6:00、ラッパが基地に鳴り響き地獄の日々が始まります。



これで航空学生の「1日」の話を終わります。



 パイロットになる為に頑張っている高校を卒業したばかりの少年達がこのような過酷な訓練を繰り返しても、実際パイロットになれるのは70人のうちの60〜70%、その中でも戦闘機に乗れる人間は5、6人なのです。

それでもパイロットになれることを信じて毎日を頑張り続けた人間だけが到達できる栄誉ある資格、それが日本の空を守っている自衛隊のパイロットなのです。

『こいつでなれたの?』

と思うような人が戦闘機のパイロットになったりしていました。

結局のところ、何事もそうですが、努力をし続けた人間が他に勝るんだと思います。

自分に楽をして自分を誤摩化して自分はやれる、そんなことを思ってる人間が成功する事はありません。


昔の僕は一度夢を「ぼくの手」で捨ててしまいました。

今の僕には守るべき家族の為に働かなければなりませんが、それでも次の夢だけは「ぼくの手」で掴みたいと思います。

今度は絶対に後悔したくありません。

前に進むしかないんです。

後ろを振り返ってる暇はありません。



さて、明日はどんな一日になるんだろう。

どうしたらもっと良い整骨院になるんだろう。

どうすれば、僕はいいんだろう。

そんなことを毎日思いながら生きています。



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Posted by ぼくの手 at 23:05 │自衛隊系
この記事へのコメント
お疲れさまでした。
海上保安庁の知り合いも、ベッドがめちゃくちゃに荒らされると言ってました。
そっち系のお約束、通過儀礼なのでしょうか?
Posted by ひだかっち at 2013年05月21日 20:25
きっとそうなんだと思います。全ての指導はちゃーんと意味はあります。そのことやらその他の出来事を書いていこうと思います。
Posted by ぼくの手 at 2013年05月21日 22:02